久しぶりにマンガネタ書きます。
今一番勢いのあるマンガ家にしてアラフォーの働く母、しかもどちらも北海道育ち、と共通点が多々あるお二人ですが、私はこのお二人の書くものから本質的な違いを感じとりましたので、その点を軸にまとめたいと思います。
例によって、真面目な作品紹介などは一切なく、勝手な呟きのみですから、そこんとこよろしく。
まずは、荒川弘氏。
この方のポリシーを一言で言い表すと、それは「マッチョイズム」ではないでしょうか。
鋼の錬金術師が大ヒットした後に、この方が実は女性だということが分かって大勢の読者が驚いたそうですが、それも頷けます。
男性誌で活躍する女性作家が増えたとはいえ、今だに「やっぱり女の書くものは」とか言われてしまうのを見ると、あえて性別不明なペンネームで書くという選択をする作家がいることは当然だと思います。
ただし、荒川さんの場合には、そういう深い狙いや何かを避ける目的でこのペンネームを使ったとはどうしても思えませんね。
実にナチュラルに、この方「漢-おとこ-」です。
そういう意味でこの人は、高橋留美子とか紫門ふみとか、かつて男性誌で活躍したどの女性作家とも異なるタイプの作家であると感じています。もしかしたら、女の視点や感性や共感をことさらに武器にしなくても活躍できるフロンティアなのかもしれないっす。
女性・妻・母である以前に、まず人間として大変に健全で強い精神をお持ちです。従って、女流作家とかいう妙な色づけやカテゴリ分けは不要な存在であり、むしろそんなのはこの方に対して失礼というものです。今回、「百姓貴族」を読んでつくづく思いました。(←これ、ハガレンより面白いってどーゆーことなの笑)
ハガレンの二次創作なんかやらかしちゃった女が言うと余り説得力が無いかもしれませんが、私は鋼の錬金術師という作品のファンというよりは作家・荒川弘氏のファンであります。
もともと私は作家主義者でして、一度好きになった作家の作品は忠実にずっと買い続けるタイプです。だから、「ああ、また財布から吸い取る存在が出現しおったわ・・・」というのが出会ってしまった時の私の正直な気持ちでした笑。
この方の何が一番素晴らしいかというと、自分が産み出したキャラクター達への愛です。それがフェアで温かいんですね。
これだけの人気作家になると、当然ネットなどで悪口も書かれますが、ほとんどは女の子が可愛くないだの美形男がいないだの絵に対するものか、ストーリーが分かりやすい面白みに欠ける、といった声。
まあ、人それぞれなので、感想は好きに受け止めればいいと思うのです。でも、媚媚の萌えキャラ作ったり、女夢全開のあり得ないイケメンを描かないことこそ、この人が成功した理由だと私は思いますがねー。この人は産み出したキャラを責任をもって精一杯”人間”として描こうとしているのであって、ストーリー都合で単純な役割与えるためだけにキャラ作る人じゃないんです。
それに、いわせてもらえれば、分かりやすい悪との対決や、Hなラブコメに頼らないで正攻法にヒューマンドラマ作って勝負できる作家が、今、他にどんだけおると思うねんや。おばさんに教えてみんかい小僧どもめ。
出産時も連載を中断させず、大ヒット作をちゃんと綺麗な完結に持ち込んだのもお見事でした。そして、次作が書けなくなる作家も多い中、全く異なるジャンルへ転身し、超地味キャラだけの「銀の匙」をヒットさせたというのも、鮮やかすぎてしびれます。本当に、並ならぬ強靭な精神がないとできない事です。
こんだけの仕事をしている人をつかまえて、ワーカホリックとか母親業は大丈夫なんかとか、まったくもって大きなお世話ですわ。仕事人として働く人には、純粋に仕事の評価だけで良いのです。それ以上いったい何を求めてんのよ?
先日、ついに新連載が開始されましたね。銀匙の方は必ずきっちりとした終わりに持ち込んでくれるだろうと安心感を持って見ておりますが、原作もの、それも「未完の帝王」我らが田中芳樹先生原作のアルスラーンって・・・、これまた凄い選択をしたものですねー。もしや、以前の原作もの失敗へのリベンジを果たそうというのでしょうか。さすが”漢”荒川ですぜ。いやもう、物語そのものよりも、ちゃんとヒットするのかちゃんと終わらせられるのか、違う意味でファンをどきどきさせてくれちゃうんだから、もう、牛先生てばニクい人です。本当に。
さてさて。一方のヤマザキマリさんですが。
この方見てると、「人生は旅」って言葉しか浮かばないです。
タフさという点では荒川氏といい勝負してると思いますが、破天荒さで圧勝してますね。
だいたい、書くものにそれがよく表れていると思います。
皆さん、当然テルマエ読みましたよね?あれ、どう思います?
名作?いえいえそうじゃないでしょう。どちらかというと、珍作の部類。
ですが、堂々の大ヒット。なんでだと思います?
絵でしょうか?絵の技術的なことは正直あまり良く分からないのですが、表紙絵以外はあまり上手いと思ったことはありませんね。あー男の裸描かせたら凄いなーとは感じますが笑。少なくとも一般的なマンガ絵とはかなり異なるテイストで、あれ、もしかして本格デッサン画でマンガ描いちゃったみたいなミスマッチ感があるんじゃないですかね?いずれにしても、キャラの魅力で売れたとはどうしても思えませんね。少なくとも、ご本人は、人物よりローマアイテム描く方が絶対好きでしょう。(そういうトコは森薫さんとおんなじ匂いがする・・・)
では物語性?・・・いえいえ。それもない。はらはらどきどきページをめくるのももどかしくっ、て思いで読んだ人誰もいないでしょうねー。
それなのに、なぜか面白いんです。全部買っちゃううんです。これ、凄いことだと思いません?
私が考えるこの方の魅力。それは、際立った個性、これに尽きると思います。
だいたいね、ローマのお話書きたいなら普通は歴史ものでしょとしか常識人には思い浮かびません。
それを何ですか?現代日本と古代ローマとをタイムトリップ&テレポート。風呂を通じていったりきたり。どういう理屈でトリップするのかとかSF的思考脳は瞬時に崩壊。
これを大真面目に作品化しちゃうんですよっ。小難しい理屈こねて設定に矛盾がどうこうと悪口ばっかり言う批評家きどりのネラーも無言化するレベル。
この突き抜けた清々しさ、圧倒的に素晴らしい。
この方以外に、いったい他に誰がこんな作品を書けるというのでしょうか。これこそが作家性でございます。「絶対人が真似できない」「絶対人が思いつかない」これこそがクリエイティブを仕事にする人の一番の武器なんですね。その事をこの人は見事に証明してくれたと思います。
ただし、正直申し上げて、オリジナル作品よりも、エッセイの方が断然向いていると思います。だから、次作がスティーブ・ジョブズの伝記をやると聞いた時、その企画だけで既に勝利している点にさすがっと驚きましたし、どういう切り口で語ってくれるのか、オリジナルを書くのよりずっと期待をしております。
また、私は、自分が若い時バックパッカーだったという事もあるのでしょうが、旅や外国生活をテーマとする本は大好きでして、ついつい買い集めてしまいます。その中でも、ヤマザキさんのエッセイマンガの面白さは、どの本もかなりのレベルで、ご自分のリアルライフをそのまんまネタにできているところに強みがあると感じます。ご本人はいたって大真面目に一生懸命生活しておられるのだろうと思うのですが、なかなか・・・、何と言うか・・・、いちいちフツーじゃない笑。本当に楽しい本ばかりで、つい憧れてしまう女性読者も多いんじゃないでしょうか。
そして、このヤマザキさんの「赤裸々さ」こそ、私は荒川氏との決定的な違いであると感じたのでありますよ。
と、いうわけで、いろいろゴタクばかり書いて申し訳ありませんでした。ようやく結論書きます。
仕事で成功する女には2種類あります。
一つは、女であることを出さず、あるいは殺し、徹底的に仕事人であることをストイックに極めるタイプ
もう一つは、女であること、妻であり母であることを大らかかつ赤裸々に出し、それを武器としてしまうタイプ
このお二人は、まさにこの2タイプの、典型的代表選手であるように、私には思えたのでした。
今一番勢いのあるマンガ家にしてアラフォーの働く母、しかもどちらも北海道育ち、と共通点が多々あるお二人ですが、私はこのお二人の書くものから本質的な違いを感じとりましたので、その点を軸にまとめたいと思います。
例によって、真面目な作品紹介などは一切なく、勝手な呟きのみですから、そこんとこよろしく。
まずは、荒川弘氏。
この方のポリシーを一言で言い表すと、それは「マッチョイズム」ではないでしょうか。
鋼の錬金術師が大ヒットした後に、この方が実は女性だということが分かって大勢の読者が驚いたそうですが、それも頷けます。
男性誌で活躍する女性作家が増えたとはいえ、今だに「やっぱり女の書くものは」とか言われてしまうのを見ると、あえて性別不明なペンネームで書くという選択をする作家がいることは当然だと思います。
ただし、荒川さんの場合には、そういう深い狙いや何かを避ける目的でこのペンネームを使ったとはどうしても思えませんね。
実にナチュラルに、この方「漢-おとこ-」です。
そういう意味でこの人は、高橋留美子とか紫門ふみとか、かつて男性誌で活躍したどの女性作家とも異なるタイプの作家であると感じています。もしかしたら、女の視点や感性や共感をことさらに武器にしなくても活躍できるフロンティアなのかもしれないっす。
女性・妻・母である以前に、まず人間として大変に健全で強い精神をお持ちです。従って、女流作家とかいう妙な色づけやカテゴリ分けは不要な存在であり、むしろそんなのはこの方に対して失礼というものです。今回、「百姓貴族」を読んでつくづく思いました。(←これ、ハガレンより面白いってどーゆーことなの笑)
ハガレンの二次創作なんかやらかしちゃった女が言うと余り説得力が無いかもしれませんが、私は鋼の錬金術師という作品のファンというよりは作家・荒川弘氏のファンであります。
もともと私は作家主義者でして、一度好きになった作家の作品は忠実にずっと買い続けるタイプです。だから、「ああ、また財布から吸い取る存在が出現しおったわ・・・」というのが出会ってしまった時の私の正直な気持ちでした笑。
この方の何が一番素晴らしいかというと、自分が産み出したキャラクター達への愛です。それがフェアで温かいんですね。
これだけの人気作家になると、当然ネットなどで悪口も書かれますが、ほとんどは女の子が可愛くないだの美形男がいないだの絵に対するものか、ストーリーが分かりやすい面白みに欠ける、といった声。
まあ、人それぞれなので、感想は好きに受け止めればいいと思うのです。でも、媚媚の萌えキャラ作ったり、女夢全開のあり得ないイケメンを描かないことこそ、この人が成功した理由だと私は思いますがねー。この人は産み出したキャラを責任をもって精一杯”人間”として描こうとしているのであって、ストーリー都合で単純な役割与えるためだけにキャラ作る人じゃないんです。
それに、いわせてもらえれば、分かりやすい悪との対決や、Hなラブコメに頼らないで正攻法にヒューマンドラマ作って勝負できる作家が、今、他にどんだけおると思うねんや。おばさんに教えてみんかい小僧どもめ。
出産時も連載を中断させず、大ヒット作をちゃんと綺麗な完結に持ち込んだのもお見事でした。そして、次作が書けなくなる作家も多い中、全く異なるジャンルへ転身し、超地味キャラだけの「銀の匙」をヒットさせたというのも、鮮やかすぎてしびれます。本当に、並ならぬ強靭な精神がないとできない事です。
こんだけの仕事をしている人をつかまえて、ワーカホリックとか母親業は大丈夫なんかとか、まったくもって大きなお世話ですわ。仕事人として働く人には、純粋に仕事の評価だけで良いのです。それ以上いったい何を求めてんのよ?
先日、ついに新連載が開始されましたね。銀匙の方は必ずきっちりとした終わりに持ち込んでくれるだろうと安心感を持って見ておりますが、原作もの、それも「未完の帝王」我らが田中芳樹先生原作のアルスラーンって・・・、これまた凄い選択をしたものですねー。もしや、以前の原作もの失敗へのリベンジを果たそうというのでしょうか。さすが”漢”荒川ですぜ。いやもう、物語そのものよりも、ちゃんとヒットするのかちゃんと終わらせられるのか、違う意味でファンをどきどきさせてくれちゃうんだから、もう、牛先生てばニクい人です。本当に。
さてさて。一方のヤマザキマリさんですが。
この方見てると、「人生は旅」って言葉しか浮かばないです。
タフさという点では荒川氏といい勝負してると思いますが、破天荒さで圧勝してますね。
だいたい、書くものにそれがよく表れていると思います。
皆さん、当然テルマエ読みましたよね?あれ、どう思います?
名作?いえいえそうじゃないでしょう。どちらかというと、珍作の部類。
ですが、堂々の大ヒット。なんでだと思います?
絵でしょうか?絵の技術的なことは正直あまり良く分からないのですが、表紙絵以外はあまり上手いと思ったことはありませんね。あー男の裸描かせたら凄いなーとは感じますが笑。少なくとも一般的なマンガ絵とはかなり異なるテイストで、あれ、もしかして本格デッサン画でマンガ描いちゃったみたいなミスマッチ感があるんじゃないですかね?いずれにしても、キャラの魅力で売れたとはどうしても思えませんね。少なくとも、ご本人は、人物よりローマアイテム描く方が絶対好きでしょう。(そういうトコは森薫さんとおんなじ匂いがする・・・)
では物語性?・・・いえいえ。それもない。はらはらどきどきページをめくるのももどかしくっ、て思いで読んだ人誰もいないでしょうねー。
それなのに、なぜか面白いんです。全部買っちゃううんです。これ、凄いことだと思いません?
私が考えるこの方の魅力。それは、際立った個性、これに尽きると思います。
だいたいね、ローマのお話書きたいなら普通は歴史ものでしょとしか常識人には思い浮かびません。
それを何ですか?現代日本と古代ローマとをタイムトリップ&テレポート。風呂を通じていったりきたり。どういう理屈でトリップするのかとかSF的思考脳は瞬時に崩壊。
これを大真面目に作品化しちゃうんですよっ。小難しい理屈こねて設定に矛盾がどうこうと悪口ばっかり言う批評家きどりのネラーも無言化するレベル。
この突き抜けた清々しさ、圧倒的に素晴らしい。
この方以外に、いったい他に誰がこんな作品を書けるというのでしょうか。これこそが作家性でございます。「絶対人が真似できない」「絶対人が思いつかない」これこそがクリエイティブを仕事にする人の一番の武器なんですね。その事をこの人は見事に証明してくれたと思います。
ただし、正直申し上げて、オリジナル作品よりも、エッセイの方が断然向いていると思います。だから、次作がスティーブ・ジョブズの伝記をやると聞いた時、その企画だけで既に勝利している点にさすがっと驚きましたし、どういう切り口で語ってくれるのか、オリジナルを書くのよりずっと期待をしております。
また、私は、自分が若い時バックパッカーだったという事もあるのでしょうが、旅や外国生活をテーマとする本は大好きでして、ついつい買い集めてしまいます。その中でも、ヤマザキさんのエッセイマンガの面白さは、どの本もかなりのレベルで、ご自分のリアルライフをそのまんまネタにできているところに強みがあると感じます。ご本人はいたって大真面目に一生懸命生活しておられるのだろうと思うのですが、なかなか・・・、何と言うか・・・、いちいちフツーじゃない笑。本当に楽しい本ばかりで、つい憧れてしまう女性読者も多いんじゃないでしょうか。
そして、このヤマザキさんの「赤裸々さ」こそ、私は荒川氏との決定的な違いであると感じたのでありますよ。
と、いうわけで、いろいろゴタクばかり書いて申し訳ありませんでした。ようやく結論書きます。
仕事で成功する女には2種類あります。
一つは、女であることを出さず、あるいは殺し、徹底的に仕事人であることをストイックに極めるタイプ
もう一つは、女であること、妻であり母であることを大らかかつ赤裸々に出し、それを武器としてしまうタイプ
このお二人は、まさにこの2タイプの、典型的代表選手であるように、私には思えたのでした。