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Channel: 妄想泥棒のブログ(銀英伝・ハガレン二次創作小説とマンガ・読書・間宮祥太朗ドラマ感想)
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ハガレン二次創作 ■焔の錬金術師81 (ロイ×アイ)

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ホークアイが簡潔にまとめたレポートに目を通した大総統グラマンは、マスタング東方司令の献策通り、イシュヴァール閉鎖地区の解放を決断した。
国内はようやく安定化に向かいつつあり、特別行政府として充実した支援体制を投入できる条件が揃っていたし、何より周辺国との外交に課題が山積みの状態のまま、火種となる民族闘争の要因を国内に持ち続けるのは避けたかった。
流散していた民族を一箇所に集めてしまうことで、独立運動や武装蜂起といった懸念は無論あったが、そこは話し合いによってきちんと落とし所を見つけられるはずだ、と考えた。
要するに、グラマンはマスタングの手腕と意志を信じたのである。

やがて、一種の儀式として行われた閉鎖区の扉を開け放つマスタング司令の写真が新聞の一面を飾る頃、懐かしい顔ぶれが東方司令部の一区画に集うこととなった。
「また人使いの荒い上司に仕えるかと思うと、ちょっと気分は複雑ですねえ。」
既にホークアイと同格の大尉へと昇進を決めているブレダがにやにやしながら呟く。彼は参謀本部で作戦能力の高さを認められ、イシュヴァール政策の中心策定者として特命を帯びて異動してきたのである。
相変わらずの皮肉な先輩の台詞に対して、技術部隊の現場リーダーとして期待されている眼鏡のフュリーは苦笑しつつ言うのだった。
「でも、嬉しいです。東部の町も懐かしいし。」
「そうそう。子育てするには、セントラルよりイーストシティの方がいいって女房も喜んでます。」
行政区の事務方の一切を取り仕切る予定のファルマンが、一児の父らしい台詞で感想を述べれば、
「だろ?だろ?だからオレも彼女に東部に戻って来てくれって100回くらい懇願したのに・・・」
車椅子の男が大げさにため息をついて同意する。ハボック商会は復興支援の主要企業のひとつとしてこの一大事業に参画の予定なのである。・・・だけど万年フラれ癖はどうやら直っていないらしい。
「それは無理よ。私は全てをレベッカに引き継いで来たし、彼女は希望通りの大総統府配属で、ものすごくはりきっているんだから。」
リザ・ホークアイもまた東部へ戻ってきた一人である。イシュヴァール地区にできた行政府の統括のため、マイルズが昇進しつつ異動したのに合わせ、空いた補佐官職、つまりマスタングのお守り役として。

マスタングは集った面々の顔をぐるりと見回して、満足そうに頷いた。
「・・・私は、約束を果たしたぞ。だから今度は君たちの番だ。」
再び私の下でばりばり働いてもらうからな!司令官の明るい声に、皆が一斉に元気良く応える。
「イエッサー!!」
マスタング組が再び揃った。
そう、その光景は懐かしいというのとは少し違う。むしろあるべき姿に戻ったかのような。皆が心の内でそんな思いを共有し、笑顔で頷きあったのだった。

「それにしても、この開発計画は、少々危なっかしいですね。」
さすがの集中力を発揮して、膨大な資料を読み込んでいたファルマンが目をあげつつ声をあげた。
「いったいぜんたい、どうしてこの土地に農業支援事業なんて始める羽目になってるんです?」
苦々し気な顔つきで言葉を探している様子のマスタングに代わって、納入物品リストと物流計画をチェックしていたハボックが答えた。
「それは、やむを得なかったんだよ。大量に人が流れ込んできて食料は要るし、仕事は要るしで、いくつかの民間業者から提案を募ったってワケ。まだどうなるか疑心暗鬼の事業者がほとんどの中で、唯一まともな提案に手を挙げてくれたのが穀物卸と販売で有名なあの企業だったと。」
「なるほどな。穀倉地帯のここ東部で一番資金に余裕がある企業といったら確かにあそこしかないからな・・・。」
ブレダがあごに手をあてながら唸るように呟くと、フュリーもまた顔をしかめた。
「でも、ファルマン先輩の指摘はもっともです。今回、かなりの数の土木技師も一緒に視察をしましたが、皆一様に難しげな顔つきになってましたからね・・・。」
意外にも、イシュヴァール人たちは、自分たちの伝統にはない小麦や作物の作付けに積極的であったらしい。
各地で都市文明に触れた者たちがその味を覚えたという事もあるだろう。だが、恐らく何よりも”仕事”を得るということを重視した結果なのだろうと思われた。
「私も、何とか無事に収穫できるように祈りたい気分なんだが・・・。」
マスタングは、腕組みをして低い声を発する。危なっかしい計画と言われる理由はよく理解していた。だが、第一歩を歩みだすのに、他に選択肢がそう無かったことも事実なのであった。

やがて、ブレダがマスタングにこっそりと耳打ちをして、来客を知らせた。
「・・・鋼の大将たちが着きましたぜ。」
ようやくか。マスタングはひとつ頷くと、ブレダとホークアイだけを伴って、客を待たせている部屋へと移動した。
「よう。相変わらず、みんな忙しそうだなっ。」
扉の向こうでは、すらりとした金髪の美青年が、すちゃっと二本指で粋な敬礼のポーズを決めていた。
その姿を見た瞬間、マスタング以下一同は石の様に固まる。
(・・・えっと・・・誰?)
にやにやと不敵に笑い、長く伸ばした金髪を後ろで束ねた姿。黒ずくめの上に無造作に赤いコートを羽織っただけのその微妙なセンス。
頭では、これは確かにエドワード・エルリックなのだと理解しているのだが、その変貌ぶりに頭がついていかない。
「へっへー。俺様の余りの美青年ぶりに驚いちまってますね、皆さん。」

「皆さんが驚くのも無理はないと思います。僕だって、旅から戻って久しぶりに再会した時、『詐欺だっ』て叫びましたもん。」
隣に立つ知的な風貌の青年が、弟のアルフォンスだと気づくのにも、少々遅れた一同である。
鎧姿で苦難の旅をしていた彼もまた、ややワイルドな雰囲気をもつ兄とはまた赴きの異なる美貌の青年へと成長を遂げていたのである。
(すごーい・・・)
ホークアイは、成長した二人の姿にしばし見惚れていたが、青年たちが人懐っこく挨拶代わりのハグをしてきた時には、自分の顔が赤面するのが分かった。
もうチビだとは言わせないとばかりに、きゅっと抱きしめられたその瞬間に感じたのは、確かに”男”の身体だったから・・・。

「じ、人体錬成ってこんな事までできるんですか?」
うろたえた余りブレダが自分のボスに向かって尋ねるが、マスタングは答える代わりに頷き、最高に不機嫌そうな声で言った。
「聞いただろう、鋼の。自首するなら今のうちだ。お前がそこまで思いつめるほどチビを気に病んでいたとは・・・」
違うって!エドワードは明るく怒鳴り返す。
「アルの奴を取り戻したらよ、急にぐんぐん伸び始めたんだよっ。つまり、これが本来の俺様ってワケ。分かった?」
えへんとふんぞり返って胸を張る青年の仕草は、確かにどチビの頃の偉そうな少年そのまんまであり、皆は苦笑しつつ認めるしかない。
らしくもなくはしゃぐホークアイを横目に、マスタングとブレダはこそこそと壁際で会話を交わしあったのであった。
「・・・ブレダよ、この敗北感はいったい何なんだろうな・・・」
「分かります、分かりますとも・・・。」

ようやく気を取り直し、改めて再会の挨拶をした後に用件を切り出したマスタングである。
「手紙で伝えた通りだ。ぜひお前の目で見てもらいたいものがある。」
そうして、一同は出発した。かつてホークアイも見たあの謎多き”神殿”へ。

「・・・間違いない。これは確かに、クセルクセスの遺跡と同じ錬成陣だ。」
エドワードは壁にうっすらと残る文様を慎重に検分しながら呟いた。
「建築様式も、似てるな。だけど、なんつーか・・・こう・・・」
青年が、眉根を寄せてうまく説明できない違和感の様なものを言い淀んでいた時、遠くからアルの声が聞こえた。
「おーい、兄さん、みんな、ちょっと見て。」
呼ばれて集まった一同に向かい、アルフォンスが指し示した壁の絵は、錬成陣とは異なっていた。
「これ、星図に見えない?」
なるほど、指し示された図は、いくつかの動物や植物などのモチーフを模りながらも、ところどころに星と思しき点を線で繋いだ跡がある。
エドワードとアルフォンスはその図について何事か議論を交し合っていたが、おもむろにしゃがみこむと、二人して地面に何やら数式を書き始めた。
「いや、だから、公転周期からいって、ここはこの係数だろ?」
「でも兄さん、地球の地軸の傾きの変動も考慮にいれないと駄目だよ。」

ホークアイが分かったのは、二人がこの図が書かれた年代の推定を始めたということだけだった。だが、書かれた数式に何の意味があるのかはさっぱり分からない。
次に、さすがの秀才のブレダもギブアップしたらしくため息と共にホークアイの隣に座り込んだ。
マスタングだけは腕組みして難しい顔をしつつ、何とか二人の議論についていこうとしていたが、結局最後は首をふりふり理解をあきらめるしかない様子だった。
「・・・で、何か分かったのか?」
天才ぶりを見せ付けられ、プライドをいたく傷つけられた焔の男は、不機嫌な仏頂面で呟く。
「・・・ああ、分かったとも。」
応じたエドワードの声が驚くほど真剣だったので、思わず一同は顔を見合わせる。
「この遺跡が、クセルクセスのものじゃない、って事がな。」
そして、続けたアルフォンスの台詞に、皆が驚きの余り息をのんだ。
「これは、作られてから少なくとも7000年は経過しています。もしかすると、もっと古いかも・・・」

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