朗読劇 「季節が僕たちを連れ去ったあとに」感想です。
ネタバレを回避しなくてはならない種類の舞台では無いと思いますので、特に配慮はしませんヨロシクm(_ _)m
19時開演で、終わったのは20時40分位でしたでしょうか。
演者も観客も休憩無しでしたが、一度も退屈する瞬間が無く、自分でも驚くほど集中して観劇してしまいました。
(割と最近は、トシのせいか映画とかでも途中で欠伸出るんですけどねw)
1)舞台演出を交えた劇です
劇と名うつ以上、朗読しかしないなんてはずありませんでしたね。
私は娘が放送部でヴォイスドラマなんてものを作ってるので、つい朗読だけの声劇を連想してしまっていたのです。すみません。
間宮祥太朗さんと玉置玲央さん以外の役者さんも加わって、台詞と役を投げ合ったり舞台上で動いたり向き合ったり。
2人の舞台俳優としての洗練された立ち姿や立ち回りが結構楽しめますよ。
台本持ったままだから、舞台のリハーサルみてるみたいな不思議な気分でした。
2) めっちゃ近いよ間宮くん
伸ばしかけ?の髪を無造作に前髪だけ上げた状態で、服装もスウェット地とか割とラフなのに、普通にかっこいいから困りますww
これ普通の劇場だったら、滅多に叶わない程の近さですよ。しかもノンマイクで生声をダイレクトに聞ける。すんごい贅沢〜
間宮氏の声の美しさは誰もが認めるところ。
本来はガタイも良くて生命力みなぎっている彼なのに、今日は何だか儚げに見えましたから、役者って凄いです。
ただ、彼の声が綺麗過ぎてむしろ残念な場面もありましたね。
山田太一さん作のドラマの名場面を再現する劇中劇があったのですが、
間宮氏の役どころはおそらく身勝手な年配の男性だったはずですが、声が美し過ぎてそうは思えず、伝わり辛かったです。難しいものですね。
3) 玉置さんさすがでした
勿論間宮氏も声質だけでなく発声も滑舌も文句なくうまいと思ってますよ?
でも、本日は舞台キャリアの長い玉置さんに一日の長を感じました。
台詞を発する時の間というかタメというか…とにかくここぞという時の台詞に観客を惹きつける力が素晴らしかったです。
間宮氏とのコンビネーションは最高の一言。2人で笑い合う場面が素敵過ぎて何とも言えません。
最初のは二人とも芝居とは思えないほど本当に楽しそうで、自然で。
最後の笑い合う場面は、追憶の中のものとして。切ない余韻が残る素晴らしい演技と演出でした。
あの後味を映画に例えるならば、「スタンド・バイ・ミー」と言ったら褒めすぎですかね…
4) 寺山修司さんの人生を知った
申し訳ないことに早逝した事位しか知りませんでした。
あんなに大病に苦しむ青春を送っていたとは…
有名な「サヨナラだけが人生さ」というのは、ただの無頼なカッコいいだけの台詞と思ってしまっていましたが、大きな誤解だったのですね。
過酷な闘病を経たうえで達した乾いた死生観というか諦観。ただのシニカルとは異なる重み苦味を感じます。
寺山修司さんの手紙として紡がれる言葉は純度の高い美しさで、間宮氏本人がもともと持っている気品や文学的な雰囲気と非常に良くマッチしているので大満足できます。
19〜20歳ならではの、恋に困惑したり憧れる可愛らしいエピソードもあり、会場から笑い声が上がる場面もありました。
5) 山田太一氏の成熟した人生
私にとっては「不揃いの林檎たち」の作者です。中井貴一らをスターにした大ヒットドラマでした。
コンプレックスに悩む若者の台詞が繊細でねえ。多感だった年頃の私は熱心な視聴者の一人でした。
そんな彼が早稲田大学時代に出会った寺山修司という男は、特別な才人でした。
地道に映画会社に勤める自分と比べ、20代で本を出し有名になった寺山氏がどんなに眩しく見えた事でしょう。
そんな複雑な心情を率直に綴る手紙から、私はこういう思いを抱いた事のある人だからこそ、あの共感を呼ぶ鬱屈した青春が描けたんだなあと感銘を受けました。
やがて、山田氏が脚本家として成功したのとまるで入れ替わるように、萎んでしまった寺山氏の命。
ドラマ以上に不思議で美しい。
手紙という形で残された男の友情の歴史を教えていただきました。
最後、ちょびっと泣いちゃいました。
明日もこっそりハンカチ持って行きます…笑