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Channel: 妄想泥棒のブログ(銀英伝・ハガレン二次創作小説とマンガ・読書・間宮祥太朗ドラマ感想)
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映画感想【殺さない彼と死なない彼女】泣いてしまったが泣くための映画じゃないんです

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私は泣いてしまいました。
けれども、これは泣くための映画ではありません。
未来の話をしましょう。
そういう映画なんです。



できれば事前ネタバレ無しで観て欲しい作品です。(なので本ブログでもそこは敢えて書かない)
もっとも、原作ありなので難しいかも…

しかし原作ファンにも納得の評価を得ている様ですし、何より結末を知ってしまった人による「複数回観て、むしろ初回には泣かなかったところまで泣いている」という感想もありましたので、とにかく先入観無しで観て欲しいです。



①「語彙力の無い」キャラたちによる台詞の現代性

愛らしい原作絵からは想像もつかない設定を背負うキャラたちです。リストカットやネグレクト親、未成熟で傷つけ合う性…うーん、、、重い。
間宮氏主演でなかったら正直観ていなかっただろうなあというのが偽らざる本音。


しかしながら、それらはサラッと触れられたり匂わされるだけで。
若者たちの閉塞感や、「生きづらさ」を訴える人の共感を無理に煽るような過度な押し付けがましさがまるでありませんでした。むしろ途中までクスクス笑いばかり。コミカルな会話劇がかなり楽しいです。


これを乙女チックな感傷だけの世界観と批判も可能でしょうが、私はそうは思いません。むしろそれこそがこの作品の肝であるぞ、と。


そういった「引き算」の脚本演出のうまさによって、キャラたちが発する語彙力の無い台詞が持つ意味や効果を、最大限引き出す事に成功していると感じたからです。

「殺すぞ」「死ね」「死にたい」
「可愛い」「大好き」「好きじゃない」


これらの拙い言葉が
SNSでよく見かける憎しみや怒りをやたら饒舌に、しかも大声で語る自称「弱者」や「悩める人」にはない、
本当にいそうな「声を出せない人」「言葉にするのが下手な人」が発する言葉としてのリアリティーを感じさせてくれたのです。


メッセージ色全開の説教臭い描き方では、決して彼らの言葉に共感など感じなかったことでしょう。

言葉にするのが苦手で「いいね!」を押すので精一杯、という不器用な現代人にとって、背中を押してくれるというより、そっと見守り寄り添ってくれる様なスタンスこそが温かいんですよね。

この作品は、そんな優しさで満ちています。




②光の魔法にかかった世界

監督が自然光での撮影にこだわり、照明部が存在しない映画です。
その独自の映像表現と効果だけでも、この作品には一見以上の価値があります。
手放しで激賞してしまっていますが、いや〜本当に素晴らしい美しさです。





俳優全員ナイスキャスティングではまってるんですが、
柔らかな光で彼らを包みこむ事で、スポットライトでは見えなかったであろう彼ら自身の放つ光が可視化されたかの様。

この結果、彼らが生きているのが光輝く眩しい青春のど真ん中と言うよりは、木漏れ日であったり陽だまりだったり夕ざしだったりする、そんなホッコリした映像世界が作られました。
彼らの不器用でマンガチックな台詞との相性もばっちり。なんとも愛らしく不思議な相乗効果を生んでいます。

そして、その独特な雰囲気もそのままに、夢の中更には記憶の中の世界へと繋がれていった時、真にその光の淡さが秘めていた切なさを知る事になる。

もう…泣かせないでください…余韻が凄いです。



③輝いたキャストたち

映画化にあたって付け加えられた命名など独自設定の数々が、どれも原作キャラを壊しておらず、監督の誠実さとお茶目なユーモアを感じます。



前述した通り、メインキャラみんな愛らしく魅力ありました。強いて挙げるなら。

桜井さんが奇跡的なハマりぶりです。
ぶっきらぼうで抑揚のない男の子っぽい台詞回しや、言葉にできないままダーって走って行ったり来たりという動物的な可愛らしさが凄く良かったです。狭い範囲ではありますが、私がこれまで見かけた中で彼女のベストアクトです👏


そして、ゆうたろう君。
月9ドラマなどでも見かけるものの、役者としては未知数だと思っていました。
しかし本作では、撫子ちゃんの永遠に見ていられる可愛い過ぎる告白攻撃(間宮談)をクールにかわして独特の存在感を発揮してました。これからが楽しみです。


我らが間宮氏は、もうね、ただひたすらに美しい…


前髪から。伏せた睫毛から。開けた白シャツの襟元から。内からなんかよく分からない光を放ってた…私が30歳若かったら間違いなく恋に落ちていたよwww
ホットギミックで繊細で儚い魅力を引き出して貰ったと感じたんですが、本作での間宮氏は、より自然体のまま切ない役どころをさらりと演じきっています。


演技に関しては、正直もう出来て当たり前のポジションに来たと思ってますが、主演として力み過ぎる事もなく存分に役割を果たせたのではないでしょうか。(ピン留め遠投や、校門乗り越え場面などアドリブ演技も多く採用されたとの事。)


長回しも多用な上に、自然光にこだわる為に陽射し待ちという事も多い「時間の使い方が贅沢で幸せな現場だった」とインタビューで答えていましたね。



TVドラマの仕事が続いており、ベテラン仕事人として頼られる存在になったんだなあという嬉しさもある昨今の間宮氏ですが、そんな贅沢な時間を許し、彼のポテンシャルをもっと発揮できる様な映画にももっと出演して欲しいと、つい強欲に願ってしまいます。



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