絶対に泣いてしまう事は分かっていたのでw、録画を一人でじっくり見ました。
①重荷になりたくないコタローくん
漫画家として勝負時を迎えた狩野どの。
多忙だけれど、コタローの送り迎えなどはこれまで通り両立したいと考えています。
突然現れて居着いている元カノがそんな狩野を気遣い、彼に代わってコタロー君の送り迎えなどを強引に請け負います。
しかし、ついつい
「狩野の重荷になっている」
と苛立ちを伝えてしまったため、反省したコタローくんは狩野を避ける様になって2人はギクシャク。
そんな時、再びコタローの父親から調査依頼があったと、青田どのから連絡が。
連絡を受けた弁護士が注意を報せると、コタローは言うのでした。
「強くなるためにここで一人暮らしを始めたのに、気づけばみんなに助けられてしまっている。」
父親から逃げる為ではなく、だから自分は引っ越しをしなければならないと。
②狩野たちもまた支えられていた
弁護士からコタローの気持ちを聞いた狩野は、仕事を必死でやり繰りし、何とかコタローの保護者としてお楽しみ会へと駆けつけました。
「親でもない貴方が、そこまでする責任ある?」
かつて青田が放ったのと全く同じ問いを突きつける彼女に対し、
「俺がそうしたいんだ。親じゃないけど、あいつの今の姿をただ覚えててやりたいんだ。」
「そうしてコタローを見守り続ける存在でいるためにも、漫画を頑張らなきゃって思うんだ」
狩野自身にも義理の親に育てられたという複雑な過去があり、自立を目指すコタローの心情は辛いほど分かってしまう。
コタローの為にお楽しみ会に駆けつけてきたアパートの仲間たちは、みんながそれぞれの哀しみを抱えています。
けれど、だからこそ寄り添いあえるのでしょうね…
達観した様な孤高の無表情だったコタローが、
駆けつけてくれた仲間たちを見つけて、別人の様に顔が明るくなりイキイキと歌い出す場面、グッと来てしまいました。子役ちゃんの演技素晴らしいです。
狩野にとってコタローの存在が重荷などではなく、むしろ成長への原動力になっている事を漸く彼女も理解したのでした。
③両親の記憶
皆の重荷になっているわけではなかったと安心したコタロー。
引っ越しはやめて、狩野といつものお気に入りアニメを一緒に観ていたところ…
街角ピアノなる番組が続いて始まった瞬間、コタローは驚きの声をあげました。
「これは!父うえと母うえである!」
それは総集編として流された過去映像の一場面でした。そこには、お腹の赤ちゃんの誕生を待っているらしき幸せそうな夫婦が…
その映像を食い入る様に眺めるコタローに、狩野のかけた言葉が温かかったですね。
「お前は愛されて産まれてきたんだなあ」
「父上と母上が仲良くしているのを見たのは初めてである」
驚きながらもそう語るコタローが切ない。
こんなにも幸せそうな若夫婦に望まれて産まれてきた筈なのに、一体どこで何が狂ってしまったのでしょうね…
あったかもしれない未来のこんな場面
けれど現実は余りにも異なってしまった様で、母親の最後の記憶がコタローの中で思わず蘇るのでした。
「きっと戻って来るから。頑張って一人で生きれる様になって」
生活苦のせいか、病気のせいだったのか…
ネグレクトの果てに荒れた部屋と、薄汚れた姿の小さいコタロー。
はっきり言って、どんな事情があろうともこの母親を許せない!という気持ちで一杯になりました。
けれども、女弁護士のエピソードを受けて考えが少し改まりました。
彼女は実は子供が苦手であり、それを敏感に見抜いていたコタローが
「自分が弱き子供ゆえ無理をさせてしまい申し訳ない。自分の父も母もそうであった」
と語り、それを先輩光石さんが
「女性だからって母性を当然視されても大変だよね」と理解を示した場面です。
私はこの時、この作品の恐らく一番強く訴えたかったであろうメッセージを漸く理解出来た気がしました。
誰かが誰かを支える時、それが一方的なものであっては長く続かないのです。それが道徳上の義務だろうと。例え夫婦や親と子の関係であったとしてもです。
けれども、人は誰も一人では生きていけない。
だからこそ互いを支え合い続けるために、各人が常に成長しようと頑張る事は大事なのです。
コタローは、子育てに耐えきれない状況になった家庭を見て育ったため、周囲の負担に敏感過ぎる子供になってしまったのかもしれません。
けれど、相手の負担を顧みず愛を試す様な甘えた求愛行動はとらない事から、愛された事が確かにあるのだと分かります。人間を憎み疑うのではなく愛し信じられる子供に育っているのですから。ただの「嫌われたくない」「愛されたい」だけの子供になっていない所に救いがあります。
④いつの日かみんなで
歪んだ執着をしていた父親は、青田から調査結果の代わりにコタローの手紙を受け取り、涙します。
そこにはコタロー自身の言葉で、強くなるまではまだ会えない。と書いてあったからです。
これで恐らく心の病であろうDVが少しでも治ってくれると良いのですが😢
そしていつの日か…
コタローは貯金を頑張り始めました。
「大きい家を建てるぞよ。そこで、いつの日か、父上と母上と、狩野どのたちとも一緒に暮らせる様な。そんな大きな家」
狩野は、本当はもうコタローの母親が亡くなっている事を知っています。けれども、敢えて今それを彼に伝えようとはしません。
コタローがそれを自然に悟るほど十分に賢く強くなるまで見守る気でいるのではないでしょうか。
ただのご近所さんなだけの彼らですが、家族にも似た優しい繋がり。
この小さなサンクチュアリがずっと続きます様に、と祈らずにはいられませんでした。
非常に重い題材であるにも関わらず、説教くさくも重すぎもしない立派なエンタメとして成立させた原作がまず素晴らしいですし、
その原作世界を壊す事なくドラマ化にチャレンジし成功させた事に感嘆しました。
もしかしたら失礼な感想かもしれませんが、狩野が編集者から言われていた評「絵に課題があるけど、プロットは面白い」というのは、原作者自身が実際に受けた言葉ではないかと感じました。
次作も楽しみにしていますので😊
ありがとうございました。