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Channel: 妄想泥棒のブログ(銀英伝・ハガレン二次創作小説とマンガ・読書・間宮祥太朗ドラマ感想)
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●バレンタインの惨劇

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このエピソードは、この春に私が突如、長年馴染んだ草食系システム部門から、肉食体育会系部門へと異動したことから始まっております。

●女子力ルーキー

異動した早々、新部署のヤングでプリティーな素敵女子ご一行様から「女子会」に誘われるなど、異文化に驚きつつも、それなりに馴染みつつあったメイさんを、悲惨な運命が待ち受けておりました。
そもそも、女子力高い集団が実効支配するこの部署にあって、バレンタインに何かが起きるだろうということを全く予測も警戒もしていなかった自分の危機意識の低さをいたく反省しておる次第です。

バレンタインの企画を考えました
ハートハート
残業が続く毎日ですが、皆で和気藹々と盛り上がりたいですね。そこで、企画を考えましたので、ぜひご協力うんぬん・・・。

例によってハートマークつきのメールが届いた時、私はなかなかに忙しかったこともあって、「あ、なるほど。さすがですね。では私も一口のらせていただきましょう。」とばかりに即効で了解とメール返信いたしました。デキる女はメールをためこみませんことよおほほ。
きっと皆で少しずつお金を出し合って、部署の男性陣に配ってあげるのだろうと、そう単純に認識したのでした。健気じゃありませんか。従って、そこに続くなにやら長~い説明文やら添付ファイルなどは一切スルー。これが全ての失敗のもとであり、その後起きた悲劇も自業自得としか言えないのであります。

バレンタインの前日にも、リーダー格の綺麗どころがしょっちゅう集まっては何やら一生懸命準備している様子。それを見かけても、「忙しいのに、偉いなあ。やっぱああいう子達がいるから部署の雰囲気がいいのね。」といたく感心したりしておりました。
そして迎えた当日。

私は正直、その日がバレンタインだということもすっかり忘れていたくらいでした。
え?ダンナにあげないのかって?自慢じゃありませんが、私結婚前に1回あげたことがあったかどうか、程度しか記憶にないです。おととし、買っておいたチョコを娘にこっそり喰われてからはもうきっぱり止めました。
以前の部署でも、腹が減った私のご機嫌をとるためにお菓子をくれる男子はいても、私から菓子をもらおうなどという勇気ある男子はおりませんでした。

突然、隣のチームのT部長から、女子一同あてのメールが届きました。
「本日は私のような者にもモロゾフを頂戴してまことに感激いたしました云々・・・」
普段はカミソリと恐れられる男のあり得ないほどに腰の低い文面を見た瞬間に、何かが始まった事を知りました。
「ああ、やっぱり若い素敵女子にチョコをもらえるのは、男性にとっては嬉しいことなのだなあ」としみじみしておりましたところ、イベントタイムの始まり始まり。

ミニチョコのつかみどり大会。ガタイ自慢の体育会系男子たちが、つぎつぎと熊のような手で袋に手をつっこみチョコをわしっとつかみあげます。
都度あがる、きゃーっという歓声を横に、私は顧客の激怒メールへ大至急返信を打つために、必死の形相でパソコンに向かっておりました。
だけど、賑やかなのは別に不愉快なものではなく、むしろテンパッてしまい祭りの雰囲気に参加できないのを残念に感じていたのです。
ええ、この時までは笑。

盛り上がる中、女子Aが私のところに駆け寄ってきました。
「あの、メイさんのキャッチコピー考えました。これでいこうと思いますが、いいですか?」
手渡されたメモには、『私、飲んだらすごいんです』の文字が。キャッチコピー??私は何のことか分からず軽く首をかしげましたが、少々テンパっておりましたし、深く考えない性格ゆえに、いいよいいよと生返事をいたしました。

次に駆け寄ってきたのは女子B。
「あの、メイさんのお名刺を1枚あずからせてください。」
は?名刺?私はますます意味がわからず困惑を深めましたが、スマホの向こうで怒鳴るクライアントの相手をペコペコしつつ、一枚をつまみあげ彼女に手渡しました。

そして、ようやくトラブルが一段落して、電話を切った私。ああー疲れた参ったなーなどとため息をひとつついておりましたら、どうやらいよいよバレンタイン企画のメインイベントが始まるらしい。ぼうっとした頭でそちらに注目しました。
「それでは、商品のくじびき大会をはじめまーす。なんと、引いたカードの女子をランチに誘える権利をプレゼント!」

・・・ふ、ふうん・・。
この時の私の感想を正直に書きましょう。
「・・・その発想は無かった・・・」
いやあ、自分たちとランチができるということが賞品になるって、相当な自信がないと出てこない発想ですよ。人生でただの一度もモテ系素敵女子であった時代がない私にとって、目から鱗としか言い様がありませんでした。
しかし、彼女たちも根拠なくこんな企画をたてたわけではないのでしょう。しょっちゅうしつこいお誘いを受けているに違いありません。実際に、若い猛獣の群れたちは、うおーと雄叫びをあげんばかりに大いに盛り上がっておりましたので。

若干引きつつも、誰からカード引くかでじゃんけんを始めた男子達の姿を眺めていたその時、ぴきーんといやな予感がして、私の背筋が凍りました。慌てて、近くにいた女子Cを捕まえて尋ねます。
「ちょっと、あのさ・・・。まさかとは思うけど・・・・もしかしたら・・・あの中に私の名刺も入ってるんじゃ・・・・」
女子Cは邪気の無い笑顔で元気良く頷きました。
「はいっ。もちろんです。盛り上がってて楽しいですね!」

ひいいいいー。やーめーてー。
私完全白目。仕事の失敗や苦情ごときではへこたれませんが、こんなダメージ喰らったことは久しくありません。誰か助けてお願い。
蒼白になって女子Bの手をひっぱり、小声で耳打ちします。
「あの、あの、私の名刺、返して、お願いっ」
しかし、女子Bは、心底びっくりしたようなくりんくりんのお目目を向けた後、お茶目に首を振りました。
「だ、め、で、す、よ、メイさんてば。メイさんだって女子一同なんですから~」

・・・・気絶。即死っす。打たれ強さに定評のある私ですが、もう完全ノックアウト。

そして、いよいよジャンケン大会で勝利した若手男子E藤が、鼻息も荒くおおはりきりで名刺袋に手をつっこみました。
「きゃー大当たりですーE藤さん!メイさんとのランチ権ゲットー!!」

もうその瞬間の私のいたたまれなさは異常。E藤よ、許せ。
君は何が悲しゅうて、カワイコちゃんでなくて上司の私を二人きりランチに誘わねばならぬ事になったのであろう。そんな目でこっちを見るな。私だって泣きたいんだ。

その後、律儀にして仕事のできる彼女らは、しっかりと私の名刺にE藤のハンコをもらって私の元へと返却してきたのでありました・・・・。
神よ、私もうライフゼロです。この辺で許してくれますか?お願いです・・・・。
無言となりデスクに座りこんだ私の頭の中では、アフリカのサバンナの幻想風景が浮かんでおりました。
集団で狩をするメスライオンの狩場に迷い込んでしまった母カバさん。巨体ゆえに攻撃は受けないけれども、やたらチームワークのよい雌ハンターたちがぐるりと輪になって取り囲み、スキップダンスしながら語りかけてきます。「ねえ今どんな気持ち?どんな気持ち?どんな気持ち?・・・」
その輪の中心でしくしくと泣いているだけのカバさんが今の私・・・・。しくしく。しくしく。

ランチ仲間である別部署の同僚(アラサーおよびアラフォー)に事の顛末を報告したところ、彼女たちは一様に同情の声をあげ、人によっては怒り出していましたね笑。
うん。もし私がアラサーであればもしかしたら怒ってしまったかもしれません。しかし、幸か不幸か私は、一番微妙なお年頃であった30代前半をのりきり生き延びてきてますんで、怒りを感じるステージからは1周遠ざかった位置におり、彼女たちに悪意などこれっぽっちも無かったであろう点については確信できているのです笑。女子たることに矜持を持つ彼女らにしてみれば、目上の私を女子扱いしないなど、許されぬ無礼だと考えていたに違いないのです。
それに、そもそも大前提として、あのノリは普段から部署の空気が良くなくてはできません。だから私は喜ぶべきなのでありましょう。断じてジョーカー(つか、リアルババ抜き・・・)と化した事をひねくれて受け止めてはいかんっ。いいぞ、私前向き。

だいたい、事の発端はといえば、私のいいかげんさにありましたしね。ぶっちゃけ私も、あんなに慌しい状況でさえなければ、一緒になってE藤に投げキッスのひとつでも送って盛り上げてやったくらいの心の余裕は保てたかも。 
何と言っても一番可哀想なのはE藤キミだってことを私は知ってる笑。今頃きっと、どうやって私をランチに誘ったらいいのか、眠れぬ日々を過ごしていることであろう。不憫な奴よ。

ただーし、女子会諸君へ告ぐ。来年ももし私がこの部署にいたら、こんなロシアンルーレットはやめていただこう。
私は、最早チョコをあげる存在ではない。もらう側の生物へと進化を遂げたのだ。女も40過ぎるとそう進化することを教えてあげようぞ。
・・・ふっ・・・。(←哀・愁)


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